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「保護者が​最後の砦だと思うんです。」小学一年生の不登校のお子さんを持つお母さんの思い

杏子さんは小学2年生のお子さんをもつお母さんです。お子さんは小学1年生の春から不登校になり、1年生の5月頃からフリースクールへ通っています。(2019年インタビュー)

親は子どもにとって最後の砦だと思う。​まずは話を聞いてあげたい。

ラシーナを知ったきっかけや利用することになった経緯を教えてください。

杏子さん:フリースクールを利用していた保護者の方からラシーナ教室を紹介してもらいました。ラシーナ以外のスクールも見に行きました。

サドベリースクール(1968年に設立された、米マサチューセッツ州フレイミングハムの私立校と同じ理念で運営をしている学校のことで、「子どもが自分の学びを決めている」「民主的に経営、人事を行っている」ことを原則としています。)にも見学に行きましたが、娘は全てを自分で決めることが苦手なので通うのは難しいなと感じました。

芯は強くてしっかり自分の意志は持っているけれど、自分から気持ちを言葉にして伝えることは苦手みたいで。

ある程度枠組みのあるフリースクールが娘には合っていると思いました。

「お子さんから学校へ行きたくないと聞いたとき、お母さんはどのように感じましたか。またどのように対応されたのか教えてください。」

杏子さん:私自身も学生時代のころはあまり学校に行きたいと思っていませんでした。だから娘の口から学校へ行きたくないと聞いたときは『あ、そうなんや。』という感じでした。

以前、娘の授業参観へ行ったときに学校の雰囲気や様子を見て、娘には少し息苦しいなと感じたことがありました。だから、あまり驚くことなく娘の気持ちを受け止めることが出来ました。

お父さんはお子さんのお話を聞いてどのように感じられていたのですか。

杏子さん:私とは反対に、夫は『学校に行きたくないってどういうことや。』とショックを受けているようでした。

小学校の先生も夫も娘を学校に行かせたいと思っていたので、初めは意見が噛み合わないことがたくさんありました。私の場合は娘との対話よりも周りにいる大人とのコミュニケーションの方が難しかったです。

私自身は学校での環境が変われば、娘がまた学校に通えるようになるのではないかと思い、小学校に手紙を送ったりもしました。でも夫はそれをあまりよく思っていないようでした。

夫は夫で娘のことを色々考えてくれていて、お友達と一緒に通学すれば通いやすくなるのではないかと、学校に戻る方法を提案してくれました。でも私は学校に行きたくない人を無理に行かせるのは違うなと思っていました。

どのようにしてお父さんの考え方が変化していったのですか。

杏子さん:何度も夫と話し合う時間を作って、娘の目線で考えてほしいと伝えました。

以前に夫が子どものころ病気で学校に行けなくて、やっと学校に行けたときに嬉しかったという話をしてくれました。
夫にとって学校は楽しいという印象しかなかったようで、学校に行きたくないという気持ちをすぐに受け止められないのは仕方がないと思いました。一概に夫を責めることは出来ないなと。

でも娘がフリースクールに通う様子を見て、少しずつ学校に通うしんどさや、娘の気持ちがわかってきたのではないかと思います。
今は日々、娘に成長させてもらっているなと感じています。

フリースクールに通うまでにたくさん悩まれたと思いますが、お子さんが学校に通えないことについて誰かに相談したりしましたか。

杏子さん:その時に相談ができる人はいませんでした。

何度か周りの人に不登校のことについて話をしたりしましたが、みんながみんな同じ境遇ではないので本当に悩みを理解してもらうのは難しかったです。相談は出来なかったけれど職場の人が心配してくれて、1月間休みをもらって子どもの居場所を探すことにしました。

市役所にも子どもの居場所を探すために電話をしました。適応指導教室も検討しましたが、高学年しか受け入れをしていなくて、断念しました。他はどれもピンとくるものがありませんでした。

お子さんが学校に行けなくなってから、今までに困ったことはありましたか。

杏子さん:私の娘が不登校であることに対して、私より周りの人の方が深刻で『気を落とさないでね。』と、とても心配されることが多くて。
でも私は学校に行っている子どもと、行っていない子どもに差はないと思っています。うちの娘も学校に行っていない間は家で毎日ご飯を食べて、眠って、普通に遊んでいました。ただ、ちょっと他の子より敏感なだけだと思います。
子どもが親に頼るのは最後の最後だから、そこで学校に行きたくない、しんどいという気持ちを否定されたら絶望的な気持ちになってしまいます。
親は子どもにとって最後の砦だと思うので、学校に行くことにこだわらずまずは話を聞いてあげたいと思っていました。

ラシーナに通うと決めた理由は何ですか。

杏子さん:初めての見学のときドアに入った瞬間、『ここいけるな!』って思いました。ここのカリキュラムがどんな風に良いから、という決め方ではなく直感ですね。

入ったときの雰囲気です。実際に娘に行ってみる?と聞いたら嫌がらずにフリースクールに行ったので、ラシーナに通うことにしました。

フリースクールは探してもまだあまりやっているところは少ないので、すぐに見つかってラッキーだったと思います。

親としては学校に行かなくてもいいよって子どもに言ってあげたいけど、『じゃあ学校に行かなかったらどこに行くの?』って悩む人もいると思います。

私の場合はたまたまラシーナがあったけれど、そうじゃない人も居ると思うので

もっとフリースクールが身近にあったらいいのになって思います。

フリースクールに通って1年2か月程経ちましたが、何かお子さんやお母さん自身が変化したことはありますか。

杏子さん:娘がだんだん元気になってきました。最近、寝起きにポロっとお話してくれることがあって。学校でどんなことをしんどいと感じていたのか教えてくれました。

学校では集団行動だったので、やりたくないことをやりたくないと言えずにしんどい思いをしていたようでした。でも、娘なりに上手くその場をやり過ごすように工夫してその状況を回避していたようでした。

今までは嫌なことがあっても、その時に話をしてくれなかったのですが、今は少しずつ落ち着いた時間に自分の気持ちを伝えてくれるようになりました。

今、学校に行けずに悩んでいる子どもを持つ保護者の方に声を掛けるとしたらどんなメッセージを送りますか?

杏子さん:以前、不登校の子どもを持つ保護者の会へ参加したことがあって、わりとみんな不登校を深刻に捉えているようでした。
その会では『私のせいで学校に行けなくて。』と泣いているお母さんもいました。そこまで自分を追い詰めなくてもいいのにと思いました。

子どもが学校に行かないことについて、否定的なことを言ってくる人が周りに出てくるかもしれないけれど、その人の意見は聞かなくて良いと思います。
たとえそれが自分の両親であったとしても。それよりも同じ思いを持った人と繋がることがとても大切だと思います。

インタビューを終えて

色々なタイミングで決断をしなければいけない場面があったはずなのに、杏子さんのお話しからはあまり迷いを感じず、考え方や価値観が非常に明確な印象を受けました。
​お子さんも安心感があったのではないかと思います。

子どもにとって何が最善かを考えて選択されているのは少し昔とは価値観が変わってきているからなのかなと思いました。

学校にいけないから仕方なくフリースクールを選ぶのではなく子どもにとって良いからフリースクールを選んだというのは意外でした。
そういう価値観を持つ人が少しずつ増えてきているのかなとインタビューを通して感じました。

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